本書は、知の巨人・柳田国男(1875-1962)を、明治国家官僚としての側面と農村各地を視察して民俗学の基礎を築いた側面に光をあて、彼が描いた真の近代化への道筋を探求した好著。近代化の再編が始まった明治四十年代、柳田は「地方」復興の糸口をどこに求めたのか。若き日に体得した身体的感受性でとらえた前近代の世界(民俗)を再評価し、それを基盤にして地方へ「産業組合」普及のための旅を重ねる。民俗学を基礎に、近代的な農政学を駆使して復興の方法を模索した、多様性に富んだユニークな生涯をたどる。
【書評等掲載情報】
週刊読書人2021年10月15日(金)付 室井康成氏=民俗学者
日本農業新聞2021年10月24日(月)付 伊藤澄一氏=JCA客員研究員
北海道新聞2021年10月31日(日)付 杉田俊介氏=批評家
Ⅰ 明治国家官僚への途――1柳田国男の少年体験/2柳田国男の青年体験―文学の抒情と屈折/3 明治国家官僚―「農」と「民俗」/4『最新産業組合通解』/5近代農政学の特質/6『時代ト農政』
Ⅱ 明治近代主義への懐疑―民俗への志向/1明治近代主義への懐疑と批判/2明治国家の再編運動―地方改良の理念/3明治四十年代―柳田国男の思想と行動/4『郷土誌論』における方法としての「地方」/5柳田国男の近代化論/6柳田国男―民俗への志向
Ⅲ 学問体系の樹立――1モダニズムと柳田国男/2自己認識の学―常民の思想
近代日本思想史研究と柳田国男
柳田国男年譜
菊池 清麿
菊池清麿 一九六〇年生まれ。岩手県宮古市出身。明治大学政経学部政治学科卒。同大学大学院政治経済学研究科修了(修士)。音楽評論・歴史家。橋川文三に日本政治思想史、後藤総一郎に柳田国男の思想を学ぶ。柳田学の近代と反近代の諸問題をテーマに日本の近代大衆音楽の分野において、藤山一郎、中山晋平、古賀政男、服部良一、古関裕而などの人物評伝、『日本流行歌変遷史 歌謡曲の誕生からJポップの時代へ』(論創社)『昭和演歌の歴史 その群像と時代』(アルファベータブックス)『昭和軍歌・軍国歌謡の歴史 歌と戦争の記憶』(アルファベータブックス)など著書多数。