負の記憶を宿す場所に立ってみなければわからないことがある。
過去の記憶を巡る旅を続ける著者は、あえてその記憶を掘り起こす〈不謹慎な〉行為にこだわる。各地で言われた「私たちは過去からほとんど何も学んでいないのではないか」という発言を背負って、辛い記憶を〈忘却すること〉に抗いながら、写真と文を刻んだ渾身の一冊‼前巻が40の旅、本書が35の旅。75のダークツーリズムを読んで、ぜひ現地へ。【目次】天災・人災の記憶/喪失する産業の記憶/戦争の記憶/差別・抑圧の記憶/生命と悲しみの記憶
Ⅰ 天災・人災の記憶
ステイ・ホーム・レス〈台風水害の多摩川河川敷〉
招致失敗のレガシー〈名古屋オリンピック構想〉
古墳へ架ける橋〈百舌鳥古墳群〉
重油が、人が、来た〈日本海「ナホトカ号」事故〉
街道の御神木は倒れて〈大湫宿「神明神社の大杉」〉
眠らない子守唄〈五木村と川辺川ダム〉
雪の中の教訓〈八甲田山雪中行軍と幸畑墓苑〉
Ⅱ 喪失する産業の記憶
晩方の企業城下町で〈シャープ工場閉鎖の矢板〉
いまを生きる廃墟〈化女沼レジャーランド〉
終着駅弁〈立ち売りの「かしわめし」〉
遺産のフルヒストリー〈佐渡金山と世界遺産登録〉
原発廃炉半島〈敦賀〉
悪い風はいねが〈秋田洋上風力発電汚職〉
欺瞞の県境〈蔵王県境移動事件〉
Ⅲ 戦争の記憶
戦争を刻んだ松〈「松根油」緊急増産〉
山を削って作る「絆」〈岩国・愛宕山開発〉
玉砕の花〈新宿御苑から「桜花」へ〉
片翼のエンジェル〈根岸外国人墓地と「ボーイズタウン」〉
戦争の地層の上に〈陶器爆弾と焼き物の里〉
戦利品は黙って吠える〈石獅子と御府〉
よみがえる戦争の亡霊〈現代に重ねた戦中戦後写真〉
Ⅳ 差別・抑圧の記憶
獅子ケ森から〈花岡事件〉
「シオンの娘」たち〈イエスの方舟〉
獄中で刻んだ〝生きる〟〈「免田事件」資料〉
「不健全」な旅〈ラブホと遊郭と給付金〉
暴動は男の顔をしていた〈日比谷焼き打ち事件〉
美しき苦難の伝承〈津和野「乙女峠」〉
逃げずにはいられない〈白鳥由栄と「博物館網走監獄」〉
Ⅴ 生命と悲しみの記憶
「神の手」が残した「原人」〈前期旧石器捏造事件〉
孤独の道連れ〈無差別殺人と「拡大自殺」〉
還暦のニュータウン〈常盤平団地〉
平地人を戦慄せしめよ〈カッパ淵と『遠野物語』〉
ゾウがいない動物園〈井の頭自然文化園〉
その日、大使館の前で〈都内の各国大使館〉
烈女と露探と護法の神〈大津事件〉
木村 聡
1965年生まれ。フォトジャーナリスト。新聞社勤務を経て94年よりフリーランス。国内外のドキュメンタリー取材を中心に活動。著作に『ベトナムの食えない面々』(めこん)、『千年の旅の民 〈ジプシー〉のゆくえ』(新泉社)、『満腹の情景』(花伝社)、『メコンデルタの旅芸人』(コモンズ)、『米旅・麺旅のベトナム』『不謹慎な旅』『満腹の惑星』(弦書房)など。ホームページ : www.pjkimura.net
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