史を想え
過去と現在との対話 蘭学研究の現場か

230頁
978-4-86329-317-5
定価 1800円 (+税)
2025年10月31日発行
紹介

本書は、「過去と今を繋ぐ」構想から、さまざまな局面で見つけた史資料を材料に、著者がこれまでに得た知見を活かして料理した歴史随筆集である。イエズス会士フランシスコ・デ・ザビエルの来航頃(中世末期)から、対外交流の制限が厳格となった17世紀中葉頃(近世初期)までの時期に編まれた史資料、江戸文化が色濃く反映した17世紀後半頃(近世前期)から19世紀初頭頃(近世後期)まで、そして幕末頃から現代までの史資料を取り上げた「過去と今を繋ぐ」全30話。「世界」の見え方が変わる一冊。

目次

 Ⅰ
第1話 死を想え――殉死と殉教
第2話 人はパンのみにて生くるにあらず――食べるザビエル
第3話 阿蘭陀迄境なしの水路なり――イギリス商館長の見た日本
第4話 散りぬべき時知りてこそ――細川ガラシャの美徳
第5話 江戸は燃えているか? ――哀しき人間賛歌
第6話 新しい天体――美味礼賛
第7話 汝の敵を愛せよ――猫と鼠
第8話 全地は一の言語、一の音のみなりき――ケンペルが見た日本人の起源
第9話 既知との遭遇――『日葡辞書』と『嶋原記』
第10話 蝶々夫人――外科医マルティン・レメイのみちゆき

 Ⅱ
第11話 武士道と云は死ぬこと? ――建前と本音
第12話 臭い物には巻かれよ――「におい」の日欧比較文化史
第13話 あら日本恋しや――海外への夢と現実
第14話 ミイラ取りがミイラに――薬としての人体
第15話 人生は短く、術は長し――名人の境地
第16話 菊花の約――約束と信義
第17話 恩讐の彼方に――唐人屋敷へ侵入せよ
第18話 初歩的な事だよ――文書主義と検死
第19話 翻訳者は裏切り者――「和解」と「翻訳」
第20話 二一八年六ヶ月の孤独――志筑忠雄の学問革命

 Ⅲ
第21話 地球は丸い…はず――ある幕末民間製の地球儀の真相
第22話 悠々として急げ――熊本の洋学政策
第23話 光はヤポーニアから――オリエンタリズムの行方
第24話 それでも天は回る――学僧佐田介石の憂鬱
第25話 朋有り遠方より来たる――「黒船」とは何か
第26話 亡書読書――書物の運命
第27話 クォ・ヴァディス――半導体狂騒曲
第28話 トンネルを抜けると…――「レンズ」と学問の意義
第29話 漂えど沈まず――人類の闘い
第30話 史を想え――近世ヨーロッパの地図に記された「海の名」が示すもの

著者

大島 明秀

おおしま あきひで

1975年生まれ、歴史学者。九州大学大学院比較社会文化学府国際社会文化専攻博士後期課程修了。博士(比較社会文化)。熊本県立大学講師、准教授を経て、同大学教授。著書に『細川侯五代逸話集―幽斎・忠興・忠利・光尚・綱利―』(2018、熊本日日新聞社)、『「鎖国」という言説—ケンペル著・志筑忠雄訳『鎖国論』の受容史—』(2009、ミネルヴァ書房)、『天然痘との闘い 九州の種痘』(共著、2018、岩田書院)、『近世日本の国際関係と言説』(共著、2017、渓水社)、『九州という思想』(編著、2007、花書房)、『蘭学のフロンティア―志筑忠雄の世界』(共著、2007、長崎文献社)他。

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