前山 光則
12月8日は鳥取県の境港市で遊んだ。
早朝、松江市は寒かった。宿から宍道湖まで約1キロ散歩してみたが、道路が少し凍っていた。自転車で登校中の女子高校生が四つ角を左折中にタイヤがスリップし、転倒してしまって可哀想であった。その代わり空は晴れてくれて、宿を出る頃には道路の状態も良くなった。JR松江駅前からバスに乗り、中海へ出て、干拓用の堤防や橋を伝って大根島を越え、約50分でJR境港駅前へ着く。ここはもう島根県でなく鳥取県で、境港はまさに「境」にあるわけだ。バスから下りると、美保湾からの海風が頬を撫でる。ああこれは日本海の方から湾に入って来た風なのだな、と思ったら、じわじわと旅情が湧いてくる。だが、なにせまだ朝飯を食っておらず、空腹であった。少し歩けば新鮮な魚介類が食べられる一角があるというので、そこを目指した。
すると、道中、妖怪だらけなのであった。水木しげるロードだ。まず真っ先に喜んだのはR氏で、彼は水木漫画のファンであるらしい。だいたい境港駅からして「鬼太郎駅」と愛称がついているし、「妖怪の国」と看板が掲げられている。なんでも、約800メートルの水木しげるロードの中には妖怪ブロンズ像が全部で153体もあるのだという。しかも一つ一つが観光客向けの作り物にしては芸術的で、見ていて飽きない。これは半端ではないゾと感心していたら、R氏が「あ、キ、鬼太郎が来る!」と叫んだ。Y女も「キャッ、ホント!」、喜びの声。なんと、向こうの方からゲゲゲの鬼太郎がさりげなく歩いてくるではないか。「おーい、鬼太郎!」、われわれが寄って行くと、彼はおもむろに右手でVサイン。なんと気さくな妖怪であることか。R氏たちが鬼太郎と並んで記念写真を撮るので羨ましくて、わたしも見習うことにした。
一度通り過ぎて境港水産物直売センターで朝飯を食ったり買い物をした後、また水木しげるロードを歩いた。水木しげる記念館の前では猫娘に出くわして、これはR氏やY女よりもわたしがノボセてしまった。顔つきに愛嬌があり、そしてしぐさがとてもかわゆい。とにかく、妖怪神社があり、土産品店には鬼太郎飴とか目玉おやじまんじゅうが売られている。鳥取銀行のキャッシュコーナーには高札が立てられて、「ATM周辺で妖怪に暗証番号を聞かれても、決して教えないで下さい」とあった。うんうん、教えちゃいかんな、と変に納得するのだった。これだけ妖怪気分に酔わせてくれるのは、ホント、お見事である。
忘れてならないことがある。水木しげるロードにほど近いあたりに品の良い喫茶店があったからみんなで立ち寄ったら、コーヒーだけでなくぜんざいも啜れたのだった。餅が二つも入ったぜんざいだ。出雲大社参道でありつけなかったものが味わえたので、甘党のS氏も満足。いや、他の者たちも同様だった。