市原猛志
【今井眼科医院 1911年竣工/新潟市秋葉区/木造2階建】
石油の里公園から新津駅に戻る際、せっかくここまで来たので、という思いから新津の市街地に遺る近代建築を一部見てまわることにした。銀行や個人宅など、現存する施設はまばらながら、どれも新津という町がある程度の拠点性を持っていなければ出来なかった建物と言えよう。なかでもここで紹介しておきたい建物は、国道沿いにある今井眼科医院である。
建物それ自体に地域的な特徴を探すことは難しい。かつて全国的によく見られた下見板張りの洋風建築であるが、竣工年代は明治期と伝えられる。なるほどかなりの年代物という視点で見ると、一階窓と二階窓とを隔てる部分には、学校建築などでも用いられる張り出し意匠や筋交い状の交差木材が見られ、これらは昭和初期の木造病院建築では見られにくい意匠である。また一世紀を経た現在でも現役の医院として使用されていることは特筆できよう。バリアフリーのために床面の一部にブロックが積まれているのは、使用され続けている証拠である。