file30 旧観慶丸商店

市原猛志
 
【1930年竣工/宮城県石巻市/木造3階建/市指定有形文化財】
 
 帰宅前日、少しでも見学したいという思いを抑えきれず、仙台の途中で石巻駅に降り立った。6年前の夏に初めて東北を訪れた際、見てみたかった場所のひとつが石巻であったが、途中熱中症で計画を変更したことが悔やまれてならない。震災を経て今回、夕暮れ時ではあったがようやく訪れることができた。
 タイルで覆われ、窓の少ない概観から一見鉄筋コンクリート造と勘違いしていたのだが、実は木造。東日本大震災時の津波を耐えたことが今更ながらに驚かされる。最上階のパラペット(胸壁)部分には緑釉のスペイン瓦が用いられており、数種用いられているタイルとあわせて昭和初期のデザインの流行を一目で把握できる。竣工当初は百貨店として用いられたこともあり、建物としての遊び心が外観のさまざまな窓の形にも見て取ることができよう。オープン直前に拝見したため、以前と変わらない姿を拝めたものの、内部に入ることができなかったことがやや悔しいというほかない。再訪するしかないだろう。
 
 
 
30-1-改修オープン間近の旧観慶丸商店-s

▲改修オープン間近の旧観慶丸商店

 
 
30-2-裏手と正面とのギャップは、木造建築によくある特性-s

▲裏手と正面とのギャップは、木造建築によくある特性

 
 
30-3-多種多様なタイルの使い方は、現在ではなかなか観られない-s

▲多種多様なタイルの使い方は、現在ではなかなか観られない