前山 光則
年が明けてから、家族3人で香港へ遊びに行ってきた。わたしは中国語も英語もまるでダメだが、女房と娘が共に英語を喋れるので、いろんな手続きや道が分からなくなって人に尋ねなくてはならぬ時などなにかと助かる。しかも、娘の知り合いのF女史が御主人の仕事の関係で香港に滞在中で、この方がまた中国語も英語も堪能で現地のことにもたいへん詳しい。いろいろと観光スポットを案内してくださり、一緒においしい物を食べたりして、3泊4日、香港を楽しんだのであった。
香港の街の、賑やかなこと。携帯したガイドブック『地球の歩き方D09・香港/マカオ』によると、香港の面積は1103平方キロメートル、これは東京都の約半分だそうである。人口約686万人とのこと、それならば人口密度はだいたい同じくらいであろうか。でも、東京の新宿や渋谷あたりの雑踏よりもさらに手応えがあり、どこへ行っても人ばかり、ウジャウジャ、ゾロゾロである。しかも昼間や夕方よりも夜が更けるほどに賑やかで活気が出てくるので、これは沖縄の那覇市中心部の国際通りで見かける現象と重なる。南方的な活力に沸き返る都市だな、と思う。しかも異国に紛れ込んだという気分にはあまりならない。同じアジアの国、黄色人種、歩く人たちを見ていて現地の人なのか日本人観光客なのかさっぱり見分けがつかない。
食べ物が、予想していたよりも味が濃くなくて、わりとあっさりしているので、もはや若くない者としてはありがたかった。昔は水上警察だったレトロな建物1881ヘリテージの中にある隆濤院(ルントーイェン)という店で昼食をとった際には、点心食べ放題とのことで次から次においしいものが出てくる。途中で、これは食べきれないかも知れないと心配になったが、やはり手がでてしまう。すっかりお腹いっぱいになった。でも、店を出て船に乗り、向こう岸の香港島へ渡る。露店の並んだ一帯を冷やかしながら歩き回った後、雲呑麺の店へ入る頃には、お腹もほどほどにへこんでいた。ここの蝦入り雲呑麺、香港で食ったものの中で最もよかった!
それにしても、実は香港には12年前にも立ち寄ったことがある。イギリスへ行く途中、香港で乗り継がねばならず、その待ち合わせ時間が約8時間もあったから、家族や友人と連れだって街へ出てみたのである。露店でシシトウガラシの天ぷらをつまんだり、小汚い店に入って雲呑麺と水餃子を食べたりしたわけだが、その折り、大通りの両側に古びたビルが林立し、窓という窓から洗濯物が吊してあったのが忘れられない。なんと言おうか、飾らぬ生活感に満ちていたのである。それが、今回は街なかのどこを歩いてみても時折り遠慮しいしい窓から下着が吊してあるのが見られる程度だった。古びた建物も減って全体にきれいで、東京あたりと変わらない気がする。
(次回へ続く)