市原猛志
【1921年/山形市/木造二階建】
山形市内は第二次世界大戦時に空襲を受けなかった影響もあり、人口規模以上に近代建築が多く遺っている都市として、近代建築愛好者の中では有名だ。中には山形師範学校本館や済生館など著名な文化財建築も多いが、その中でも一度は詣でておきたい写真館建築を、現地の保存団体の協力のもと、たまたま拝観することができた。表通りからひとつ通りを隔てたところに位置する木造一部二階建の西村写真館は、職住一体型の洋館で、2階部分にスタジオを持った国登録有形文化財である。写真館としての歴史を終えたのちは特に用途が定まっていないため、現役当時の雰囲気を濃厚に維持している。とりわけ2階のスタジオは天井から採光する写真館ならではの明るさと、背景用に作成された絵画など、近代の写真が持つ記念品としての大切さがよく理解でき、建築好きならずとも見ておきたい。普段は非公開ながらイベント時などに見学が可能だ。わざわざこのために訪れたい、名建築といえよう。