市原猛志
【1874年創業/三重県多気郡明和町/木造平屋建】
やや小雨の降る中、三重県松阪市周辺の産業遺産をめぐる見学会が催された。三重県でも松阪と言えば松阪牛で知られているが、古くは木綿産業で栄えた地域であり、松阪市や周辺市町では現在も織物工場が稼働を続けている。それらの中でも古くからの天然藍による先染めと集中動力による織機を現在でも使用している工場はこちらの御絲織物工場のみであり、今回の見学会のメインであった。
こちらの工場では見学者は少人数でしか受け入れていない、という話を伺い、なるほどそれは工場内に入ると理解ができる。見学者専用の歩道があるわけでもない現役工場は、ところどころ危ない個所もあり、また織機の稼働音で解説者の話も聞き取りにくい。しかしながら、現代の柄の選定や糸交換、また製品完成に至る工程がブラックボックス化した工場では決してわからない、物が少しずつ出来上がっていく様を見学できることは、産業技術の歴史を学ぶ私にとっても非常にありがたい経験であった。