市原猛志
【1931年/大阪市/鉄筋コンクリート造3階建】
大阪城内にある国防遺産・第四師団司令部庁舎の改修が特徴的、という話を伺い、これは後学のために見ておかねば、と予定を合わせ見学の時間を設けた。結論だけ先に述べると鉄筋コンクリートという形を最大限に活用した、特筆すべき、とも言い難いが、うまく頑張った改修例ではないかという感想を持った。天井部分に下手な改造を施すことなく、入れ子状態でコーナーを設けブースを区切る形式は、イベントの仮設ブースで応用されている形式だが、テナントの移動が激しい商業施設の物販ではこのようなやり方が遺産そのものの価値を毀損することが少ないため、私としては十分評価できる。指摘される問題点があるならば、構造体としての使い方ではなく、そのテナント選定に対する歴史性への配慮にあるのではないだろうか。いかにもインバウンドを意識した土産物店とレストランの組み合わせは、確かに外国人観光客には使い勝手の良い施設となっているものの、施設の歴史を察するものとはなっていない。これは今後の改善点となってもらいたいものだ。