連載コラム: 『本のある生活』 2016.04.14

第256回 ぜんざいを食いながら

前山 光則

 3月14日は識名園で休憩した後、近くの「田舎」という名の食堂でソーキソバを食ってから那覇の中心部へ下って行った。与儀公園で山之口貘の詩碑を観たり、県立図書館で郷土資料類を閲覧し、ふと気づくと午後2時過ぎ。なんだかコーヒーを飲みたい気分だ。
 ヤチムン通りでカフェに入り、コーヒーとケーキを注文した。すると、若い女性店員さんが「ぜんざいを、食べてみませんか」と勧めてくれる。ほう、ぜんざいねえ。そうすることにしたが、さてやがて品物が出てくると、エッ、これはデッカイかき氷……。全体に褐色のものがまぶしてあるのは黒砂糖だ。金時豆も20粒ほどトッピングしてあり、下の方にいくつか埋め込んであるのは白玉団子。たまげてしまったが、つまり沖縄の「ぜんざい」は熱い汁ではないのである。春の「うりずん」の時季にかき氷を食う羽目になろうとは、想定外だった。スプーンで掻いても、掻いても氷が減らない。しかも黒砂糖を塗してあるのでとってもおいしい。そしてようやく半分以上を食い終えた頃、今度は金時豆がたくさん現れたではないか。これには二度ビックリ。金時豆はトッピングしてあるだけではなかったわけで、ぜんざいを平らげた時にはすっかりお腹いっぱいの状態になってしまった。
 そういえば、ソーキソバも本土の「蕎麦」とは似ても似つかぬ独特の麺類であった。後で平和通り商店街を歩いてみたら「かまぼこ」が売ってあったが、これは「ジャコ天」であった。本土の蒲鉾が白く漂白してあって味も薄いのに対して、沖縄のかまぼこはまさしく天ぷら色、すごくおいしかった。つまり、沖縄では本土とまったく違う「ぜんざい」や「ソバ」や「かまぼこ」が大きな顔して売られており、それでいてどれも良い味だ。そう、何も規格通りに本土と同じ物が作られる必要はなく、沖縄には沖縄のものがあればいい。
 一方で豆腐を固める前のどろどろした状態「ゆし豆腐」、本土で言えば「寄せ豆腐」だろうか、これがまたうまい。味噌仕立ての汁に入れて食べるのが一般的のようだが、そのままでも充分に味わいがある。早い話が、豆腐そのものの質が良い。本土の豆腐がただ柔らかいだけでちっとも味わいのないものがはびこっているのに比べると、沖縄の方がずっと豆腐の昔ながらの味わいを保ってくれていることになる。まだある。やはり平和通り商店街で出会った団子屋さんだが、平たい木箱にガラス張りの蓋がついている中に手作りの団子や餅が並べてあった。小さい頃、故郷人吉では各町内で日を違えて春の市(いち)が立っていたが、やはりこうした容れ物に市団子(よもぎ餅)が並べて売ってあった。その光景が思い出され、ひどく懐かしかった。
 本土とはまったく違うものがある一方で、本土がなくしてしまったものがしっかり保たれている……。沖縄はやはり飽きない!
 
 
 
写真①ぜんざいとコーヒー

▲ぜんざいとコーヒー。ぜんざいがあんまり立派に聳えているので、コーヒー碗が小さく見える。ほんとはコーヒー碗も結構大きめなのだ

 
 
写真②かまぼこ店

▲かまぼこ店。伊江島で捕れた魚を原料にして作ってあるのだそうだ。1枚200円で売ってあり、1枚食べるだけでお腹いっぱいになる

 
 
写真③ゆし豆腐

▲ゆし豆腐。公設市場2階の食堂で食べた。沖縄の豆腐はほんとに味わい深い

 
 
写真④団子屋さん

▲団子屋さん。朝はこの箱いっぱい餅や団子が詰められていたのだが、あらかた売れてしまったのだという。店のお婆ちゃんとだいぶん世間話をしたが、お婆ちゃんは時々家で山羊料理を食べる。しかし「山羊は臭いからさ」、だから少々苦手だ、と言っていた。山羊の匂いはそんなに気になるかなあ?

 
 
写真⑤パパイア

▲パパイア。家の庭に植えてあるのを何カ所かで見かけた。青いまま収穫して薄切りしてサラダに使うことが多いようだ。味噌漬けにされる場合もある。熟してから食べる習慣はあまりないのかな?

 
 
 

こんなのもアリマス

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