「対談 ヤポネシアの海辺から 」書評から

深く静かな世界だ。それでいてゆたかに広々としている。(略)口からこぼれ出る言葉のかずかず。長い時間をかけて海の底からここに届いた美しい貝のようだ。
やがて対談はふたりの創作の源へとすすんでゆく。そこにあるのは作家をはぐくんだ土地の繊細な文化が失われたことへの「哀憐ただならない気持ち」。そして書くことを自らの役割とした強い意志だった。(与那原恵・ノンフィクションライター 中国新聞/2003年6月8日付、埼玉新聞/同日付 他)

二人の対談は、自らの深い体験を踏まえて、自然と人間の根源的な関わりのあり方を縦横に語ったものとして注目されるだろう。(岡本恵徳・琉球大学名誉教授 朝日新聞/2003年6月7日付)
こんな本が目にとまると非常に得をした気分になる。(略)食。衣と住。声・歌・木・性・神。そして古里・祝祭・言葉・文化。厚い本ではないが、実に多くのことが縦横に語られている。若い読者なら「丁寧すぎる」と思いそうな言葉遣いに、久しく聞かない「たしなみ」を感じた。(読売新聞/2003年6月1日付)

どこを読んでも面白いのだが、やはり強調すべきは両氏のことば・声の一種の天上性であろうと思う。身は、むろん現世にある。今のこの荒れ果てた時代の現世にあって、しかし両氏の目は、過ぎ去った、とうに失われた遠い、遠い昔に注がれている。
この対談の基底に流れているモチーフは、人の心の「母層」にあるものとは何か、という問いである。(松原新一・文芸評論家 読売新聞/2003年6月23日付)

この対談は十二年前に行われたものだという。巻末に解説を書いた前山光則(作家)は「この長篇の対談は捕れたての魚のようにみずみずしい」と述べている。それは、対談の主題となっている事柄が現在、ますますあからさまに、深刻になっているためでもあろう。
ヤポネシアの思想とは海に向かう思想であり、陸地の思想ではないということをこの対談集は示唆している。(川満信一・詩人 図書新聞/2003年6月28日号)

美しい言葉が聞こえてくる。……二人に通底する原風景の一つが海辺である。そこから縦横に発せられる言葉は、現代日本がなくそうとしている言霊のように聞こえてくる。(江口司・民俗研究家 熊本日日新聞)

雑誌『クロワッサン』617号の特集「女が惚れる女とは」の記事「女と女のいい関係を描いた小説と映画」の中で取り上げられました。選者は与那原恵さん(ノンフィクションライター)。
「互いの作品をとても尊敬しあっている。また、自分たちが書かなくてはならない意志みたいなものを共有している関係がいい」(与那原さん)

◇「スミセイBest Book」2003年11月号で紹介されました

神秘的な海辺の美しい景色や、日本に古来伝わる自然と共に暮らす生き方を、生きた言葉から知れる貴重な一冊。そこには豊かな大自然とのすこやかな交歓がある。(松浦弥太郎・ m&Co.booksellers 装苑/2004年5月号)