不謹慎な旅
負の記憶を巡る「ダークツーリズム」

264頁
978-4-86329-241-3
定価 2000円 (+税)
2月28日発行
紹介

原爆死没者慰霊碑、バングラデシュの難民キャンプ、筑豊のボタ山、見世物小屋、沖縄の基地建設現場、東北の震災遺構、原発建設予定地……戦争や天災・公害・差別・事故など哀しみの記憶を宿す場所を訪ねるダークツーリズムは、新しい旅のスタイルでもある。
 本書では、生々しい記憶が残る場所と地域を40の項目でレポートしながら案内する。そこでは何が起こっていたのか。記憶と風景が忘却されないためにも、写真と文で焼きつけた渾身のルポ!!「週刊金曜日」連載を5つのテーマで再構成。写真165点余を収録。

【書評等掲載情報】
朝日新聞2022年3月26日(土)付 生井英隆(立教大学アメリカ研究所所員)
東京新聞2022年3月26日(土)付 著者本人寄稿
中日新聞2022年3月27日(日)付 同上
週刊読書人2022年4月22日(金)付 深見聡(長崎大学准教授・観光学・人文地理学)
西日本新聞2022年4月30日(土)付 麻生晴一郎(ルポライター)

目次

I 天災・人災の記憶
解体するあの日と明日〈旧大槌町役場と東北の震災遺構〉
〝ポンペイ〟は二度没す〈浅間山噴火と八ッ場ダム〉
ひとりぽっちの海漂林〈ベトナム沿岸のマングローブ〉
台風銀座は知っている〈室戸台風と吉良川町〉
難民の末裔〈新十津川町〉
根絶と絶滅の間で〈キョンとニホンオオカミ〉
川には矛盾が流れる〈「四国三郎」吉野川〉
豚の場所〈エジプト・カイロ〉

II 喪失する産業の記憶
月曜日の海に吠える〈祝島と上関原発建設予定地〉
ダモクレスの鉱山〈旧足尾銅山と松木村跡〉
地球にやさしい死出の旅〈宇宙葬・海洋散骨・樹木葬〉
挽歌に刻まれた残照〈ニシン御殿と笠戸丸〉
〝忖度道路〟の先のボタ山〈筑豊三都〉
悲しみは福島に向かって〈常磐線全線再開〉
失われた扇〈長崎「出島」〉
村も町も平成に消えた〈大合併と中越地震〉

III 戦争の記憶
「過ち」の主語を探して〈原爆死没者慰霊碑とニ号研究〉
嗤うロヒンギャ〈バングラデシュ「クトゥパロン難民キャンプ」〉
麻薬大国ニッポン〈国産アヘンとケシ畑〉
出会いは「学ぶ旅」にて〈沖縄スタディーツアー〉
星になった子どもたち〈戦争マラリアと八重山諸島〉
大きな横田の空の下〈福生ベースサイドストリート〉
焼け野原の国策アニメ〈『桃太郎 海の神兵』〉
嘘をつけ! 〈8月15日の『堕落論』〉

IV 差別・抑圧の記憶
葬れなかった17音〈川柳家・鶴彬〉
わたしは登ってみたい〈大峰山「女人結界門」〉
最後のミセモノたち〈ミゼットプロレスと見世物小屋〉
スタジアムへ連れてって〈旭川スタルヒン球場と埼玉スタジアム2002〉
急坂の上のユートピア〈かにた婦人の村〉
阿弥陀如来の足元〈牛久入管収容所〉
苦患の闇を照らす〈ハンセン病「重監房」と「継承講話」〉
ウポポイで歌う「私たち」〈民族共生象徴空間とシャクシャイン〉

V 生命と悲しみの記憶
自殺の名所と恋人の聖地〈南紀白浜「三段壁」〉
ササニシキはなぜ消えた〈1993年の米騒動〉
頭上で炸裂する岡本太郎〈『明日の神話』と第五福竜丸〉
石に託す〈賽の河原と羅漢像〉
すべてはOFFのために〈〝コロナ〟とクラウドファンディング〉
怪談は弱者の叫び〈『番町皿屋敷』〉
小○(困る)漁民たち〈三閉伊一揆と「浜の一揆」裁判〉
鞆で死にたい〈「鞆の浦」の地域介護〉

著者

木村 聡

きむら・さとる
きむら・さとる

1965年生まれ。フォトジャーナリスト。新聞社勤務を経て94年よりフリーランス。国内外のドキュメンタリー取材を中心に活動。著作に『ベトナムの食えない面々』(めこん)、『千年の旅の民 〈ジプシー〉のゆくえ』(新泉社)、『満腹の情景』(花伝社)、『メコンデルタの旅芸人』(コモンズ)、『米旅・麺旅のベトナム』『不謹慎な旅』(弦書房)など。ホームページ : www.pjkimura.net

弦書房より発行の関連書籍

米旅・麺旅のベトナム