球磨おんな風土記

208頁
ISBN:978-4-86329-298-7
定価 1800円 (+税)
2025年2月28日発行
紹介

日本の歴史上、鎌倉以後室町戦国期、さらに織豊期・江戸期を通して、700年間、藩の名とその位置づけが変わらなかった数少ない藩のひとつ、相良藩(熊本県球磨・人吉地方)の物語である。さらにおもしろいのは、この藩の中で男たちの後ろを支えながら、強くそして優しく生き抜いた女性たちに光をあてていることである。各時代で、女たちは、家の奥をあずかりながらお家騒動に巻き込まれる一方で、歌を詠んだり旅をしたりして愉しみを見つけていた。少ない史料・史蹟を博捜し、複雑な人間関係は系図で補いながら鮮やかに描き出した労作。

目次

球磨川流域図
球磨絵図相良七百年歴史略年表
序章

第一章 事件渦中の女たち
 ⑴ かくれ真宗の女たち
   武家女性たちの入信
   丑歳騒動 日野エキ
 ⑵ 獺野原合戦 相良義陽母「内城様」
 ⑶ 御手判事件
   御門葉相良織部妻於為
   浪岡伊豫

第二章 女たちの教養
 ⑴ 繊月連の女流歌人たち
 ⑵ 孫に相良史を語る新宮みや

第三章 相続問題に揺れる女たち
 ⑴ 相良政太郎義休廃嫡一件
   濱崎於見恵
   樅木ソチ
 ⑵ 五日町若宮社創建 永富(留)頼常継母
   ⑶二十三代相良頼福夫人の養心院と真光院
 
第四章 相続権を持つ鎌倉時代の女たち
 ⑴ 土地持ち分限者の女たち
   尼妙阿
   長妙女と長者女
   命蓮尼
 ⑵ 相良史開闢の女たち
   青蓮尼
   蓮珍
   上妙

第五章 江戸時代庶民の女たち
 ⑴ 旅を楽しむ九日町の理壽
 ⑵ 夫婦善哉
   黒木篤兵衛女房
   十蔵屋女房
 ⑶ 八代御仮屋水主妻 徳澄ナミ
 ⑷ 天草人と結婚した七日町のきん

第六章 神仏に祀られた女たち
 ⑴ あさぎり町上の姫宮神社
 ⑵ 隣国で神になった女
 ⑶ 猫寺騒動 玖月善女

第七章 夫を支える内助の功の女たち
 ⑴ 西南戦争(一八七七年)
   敵味方に分かれた新宮家の姉妹たち
   女スパイ吉永ツル
 ⑵ 幸野溝開削 高橋政重の妻
 ⑶ 人吉藩校「習教館」
人吉三賢の妻たち
   東白髪妻喜慈
   田代政定妻トミ
   豊永訥妻気弥
 ⑷ 老神社神官の妻 春顔貞性
 ⑸ 茸山騒動 田代政典妻イエ
 ⑹ 薩摩瀬下屋敷初女主人 蓮池寶心

第八章 相良清兵衛にまつわる女たち
 ⑴御下の乱相良清兵衛内儀
 ⑵ 相良清兵衛娘 明窓院
 ⑶ 西国大名初証人 了玄院

第九章 伝承行事を支える女たち
 ⑴ 御伊勢講の女たち
 ⑵ 相良三十三観音の女たち

著者

井上 道代

いのうえ・みちよ

1948年、熊本県人吉市五日町生まれ。1971年、鹿児島大学法文学部文学科卒業。1993年より人吉市文化財保護委員、現在委員長。人吉市教育委員会の委託により人吉球磨歴史資料調査目録作成に従事。願成寺・相良神社・青井神社・聖泉院他個人所有文書など多数。球磨絵図活字化。諸家家譜作成。
共著および論文
「ひとよし歴史研究」№1~№25
『復刻増補熊本県球磨郡人吉市真宗開教史』『球磨焼酎 本格焼酎の源流から』(弦書房)『球磨郡医師会百年史』『図説人吉球磨の歴史』『くまもとの女性史』(くまもと女性史研究会)『江戸期おんな表現者辞典』(桂文庫)「相良領内隠れ真宗の女性たち」「相良史を歩いた女性たち」(江戸期おんな考№14、№15桂文庫) 「相良清兵衛一件」『人吉藩校』 外 諸誌掲載歴史随筆